記事の要旨:老後生活やFIRA60を達成するために投資は必要か?という問いに対しては、「必ずしも必要ではありません」と言うのが答えです。必要となる資金、将来必要となる費用の全てを預貯金と年金で賄えれば、投資の必要はありません。その金額が用意できた時点で、いつでもリタイア可能です。では、いくら準備出来れば良いのか、順を追って見て行きましょう。
老後に必要な資金
生活費

生活費については、下の数式が成立すればOKです。
収 入 ≧ 生 活 費
老後の基本的な収入の柱となる年金だけで生活費を上回るあるいは、同等であれば生活は、破綻しません。また、不足があれば生涯、預貯金からの切崩しで対応出来るだけの蓄えがあれば、それでも問題ありません。もちろん不足分を労働、給与所得などで補えるのであれば問題ありません。



しかし忘れてはならないのは、インフレによる物価上昇とマクロ経済スライドによる年金額の目減りです。
想定されているインフレ率
現在のところ、専門家間ではインフレ率の予測に大きなばらつきがあります。しかし、多くの予測では、当面は2%を超えるインフレが続く可能性が指摘されています。ただし、これはあくまで一つの予測であり、様々な要因によって変動する可能性があります。
どちらに転んでも大丈夫なように
FIRA60バランスライフでは、どちらに転んでも大丈夫なように、大きくは失敗しない方向で考えて行きたいと思いますので、一旦、実質インフレ率を2%と仮定してシミュレーションを行います。また、年金の増額は考慮しません。厳しめに無いものとします。
標準的な夫婦2人世帯の家庭のシミュレーション
標準的な生活費 約28万円(年間336万円)、厚生年金月額23万円(年間276万円)この数字が老後2,000万円問題として世間を賑わせたベースの数字です。65歳の定年を迎えた時に2,000万円の資産を保有していた場合、どのような資産推移を辿るのか検証してみます。



Microsoft Excelを用いて計算シートを作成し、数値を入力します。





実質インフレ率0%で65歳から年金を受取った場合の結果がこちらです。


65歳からの資産減少の推移は、このようになります。3本の線は、参考として預金金利の差で結果がどのように変化するか解かるように表示しています。



預貯金金利の差で約4年程度の違いが生じています。これを見ると金利を味方につけない手はないでしょう。
ココからの試算は、今、現時点において60歳の夫婦が、5年後の65歳でリタイアするケースを試算します。(インフレを加味します)



設定は、このようになります。



黄色網掛け部が、リタイア開始時の生活費(現在と同等の生活レベルを維持できる金額)となります。





するとこのように、実質インフレ率2%の環境で、65歳から年金を受取った場合の結果がこちらです。





実質インフレ率0%では97歳頃まで保てた資産が、実質インフレ率2%では78歳あたりで枯渇してしまうという結果になりました。



次に、では、いくら預貯金があれば、実質インフレ率2%の環境で、試算1と同様の結果を得られるのか検証してみます。





結果は、約8,400万円で概ね同等となりました。
インフレで老後4,000万円問題という説が出ていますが、それは、今リタイアされる方の場合という事と想定実質インフレ率を逆算すると0.75%程度の設定となっているからです。今から5年後にリタイアするケースで、実質インフレ率を2%で試算した場合は、こんなにも異なる結果となるのです。(年金の増額は、加味せず試算していますので、厳しめの数値とはなっています)



皆さま、如何でしょうか。
私、かもナスの感想は「インフレ恐るべし」デス。



では、年金の繰下げ受給をした場合を見てみましょう。
70歳からの受給とした場合





必要金額は、約6,500万円となりました。繰下げによる年金増額の効果で約1,900万円下がりました。



次に75歳からの年金繰下げ受給を見てみましょう。





結果は、約5,600万円とさらに下がりました。
FIRA60の検証



それでは、ここからは、FIRA60を検証して行きましょう。
モデル設定したこの夫婦が、今から5年後にリタイアするのではなく、今すぐ60歳でリタイアする場合のシミュレーションとなります。



まず、60歳から繰上げて年金を受取る場合です。





結果は、約11,000万円となりました。これは、中々の金額です。



次に年金を65歳受取にしてみます。





こちらも、約10,000万円と大台に乗っています。



では、70歳受取ではどうなるでしょう。





結果は、約8,000万円となりました。



最後に75歳受取の場合です。





結果は、約7,300万円となりました。



如何でしたでしょうか。
預貯金のみでリタイア後の生活水準を維持するためには、どの位の金額が必要となるのか、ある程度、見えて来ましたでしょうか。
最も少額で済むのは、
65歳でリタイアし、年金を75歳で受け取る場合の約5,600万円【試算5】となります。
すなわち、65歳の通常リタイアであっても、約5,600万円は、必要となって来ると言う事です。
FIRA60の基準年齢である60歳でリタイアする場合、年金を75歳で受け取る場合の約7,300万円【試算9】となります。
表にまとめるとこのようになります。(70歳以上でのリタイアは、数字だけ調べて掲載しています)


インフレを加味した生活費



こちらが、最後に試算した設定値ですが、年金は基本額276万円の84%増しとなり、約508万円となっています。





当初リタイア時の生活費も336万円であったものが、30年後の90歳時点で約609万円となっています。つまり、現在の生活レベルを維持するのに、2%の実質インフレの世界では609万円も必要であるという事です。
その他の費用
老後資金は生活費以外にも高齢時の介護費用と葬儀費用の準備も必要とされています。夫婦2人世帯では、約1,000万円準備しておくと良いでしょう。となるのですが、かもナス的には、約500万円程度でも良いと考えています。



理由は、本当に100歳まで生きられますか?という事と、90歳になって、標準的な生活費が本当に必要ですか?ということです。



つまるところ、今ファイナンシャルプランを完成させることも大切ですが、将来起こり得るイレギュラーに対して都度見直しもしなければなりません。
また、今後もそうですが、かなり厳しめのシミュレーションで行っていますので、5年ごとあるいは10年ごとの生活レベルの微調整で調整の効く範疇ではないかと考えています。
まとめ



今回は、実質インフレ率2%設定、年金の増額は加味しないという設定でシミュレーションしましたが、ある程度の数字が見えて来ましたでしょうか。



インフレ率の予想は難しく、雲を掴むようなものですが、かといって、とても無視出来る存在ではありません。



インフレへの対策は、現預金だけでは、無防備な状況で全くと言っていいほど太刀打ちできません。



インフレに対応出来る資産は投資ジャンルにしか存在しませんので、現預金だけで老後生活を安定させるためには、厳しめに、厳しめに見積もることが、とても重要になって来ます。
次回記事では、今回同様、投資に頼らない【単身者編】をシミュレーションし、その後に前回告知させて頂いた投資した場合の資金についてシミュレーションして行く予定です。ぜひ、ご一読いただきたく、宜しくお願い申し上げます。
本日は、ここまでお読みいただき
誠にありがとうございました。

