記事の要旨:長年、世界経済の中心に君臨してきた米ドルの信頼が揺らぎ、直近、基軸通貨としての地位が脅かされようとしています。特に、米国の保護主義的な関税政策とそれに伴う金利上昇をきっかけとしてついに、グローバルな経済秩序と通貨システムに与える影響が無視出来ない状況となってきました。このような現状を踏まえて私たちはどのように対処すれば良いのか、資産保全の観点からどのような未来を予見することができるのかについて深掘りしていきます。本記事をご一読いただくことで、オルカン派の皆様も含め、多数派の投資方針となっている「米国中心のアセットバランス」を継続すべきかどうかご理解いただけます。
基軸通貨の喪失【米ドルは信頼を失うのか】米国の関税政策と金利上昇が招くドル離れの危機
以前の記事「金(ゴールド)が重要なのか【現金では資産保全できない】」で触れましたが、世界最大級のヘッジファンド、ブリッジウォーターの創業者レイ・ダリオ氏が提唱する「典型的なビッグサイクル」における「衰退期」が進行し、全18段階のうち、16段階目となる「基軸通貨の喪失」という危機的な状況が現実味を帯びてきました。
多くのニュース記事では、米国の保護主義的な関税政策が米国、また世界経済の景気後退を招くといったような論調で取り扱われていますが、これはあくまで表向きの情報に過ぎず、レイ・ダリオ氏によると、もっと重要な経済の根幹が揺るがされている別次元の危機的状況であるとの警鐘を鳴らしておられます。
詳しくは、コチラのグローバルマクロ・リサーチ・インスティテュートの記事をご一読ください。
2025年4月14日「レイ・ダリオ氏: 株価暴落で米国債からゴールドに資金が逃避している」
2025年4月16日「株式市場暴落、トランプ政権はこれから何度でも米国債下落に脅され続ける」
今更聞けない?基軸通貨とは?:基軸通貨が現在米ドルである主な理由
「基軸通貨の喪失」がなぜ危機的な状況となるのかについてご理解いただくために、まずは「基軸通貨」についておさらいを兼ねてご理解いただくために、歴史を遡ってお伝えします。
第二次世界大戦後のブレトンウッズ体制
1944年のブレトンウッズ協定により、米ドルは金と固定相場となり、金との交換が保証されていました(いわゆる金本位制)。そして、他の主要通貨は米ドルに連動する体制が確立されました。これにより、米ドルは国際取引や決済の中心的な役割を担うようになりました。
しかし、1960年代に入ると、ベトナム戦争の戦費拡大と社会福祉政策の拡大により、米国の財政赤字が膨らみました。この結果、米国の国際収支が悪化し、さらにインフレへの懸念からドルの信頼性が低下したことで他国が米ドルから金への交換を求め出し、米国の金準備が著しく減少していくことになりました。
このように米国は、金の保有量が大幅に減少する中で、破綻を防止するために1971年、リチャード・ニクソン大統領は米ドルと金の交換を停止する決断を下しました。このニクソン・ショックと呼ばれる発表により、事実上金本位制が終了し、米ドルは金との固定相場制を離れ変動為替相場制へと移行しました。これにより、ブレトンウッズ体制は事実上崩壊し、金本位制は終焉を迎えました。
その後、金本位制が終了した後も米ドルは広く使用され続けています。これは米国の経済力、安定した政治基盤、そして世界的な貿易取引(特に石油取引)が米ドルで行われることに大きく起因しています。また、米国の強大な軍事力と国際的な政治的影響力も、米ドルの地位を間接的に支えて来ました。

つまり、金本位制が終焉を迎えても「米国への信用が継続」したことで米ドルが基軸通貨として君臨できていたということです。
米国の関税政策が引き起こす連鎖反応:インフレと金利上昇が資産価値を蝕む
既に周知のとおり、米国は国内産業保護のため、輸入に関税を課す政策を積極的に進めています。これは、米国の財政難解消のためとは言え、輸入品の価格上昇を通じて米国内のインフレ圧力を更に高める要因となり得ます。ひいては、米国への投資妙味が減少することに繋がります。
輸入コストの増加と物価上昇:購買力低下の現実
関税は輸入業者にとってコスト増となり、そのコストは最終的に製品価格に転嫁され、消費者が負担する物価水準を押し上げます。広範囲な品目にわたる関税は、インフレを深刻化させ、資産の実質的な価値、つまり購買力を低下させることに繋がります。
金融引き締めという防波堤:しかし副作用も
高まるインフレを抑えるため、米連邦準備制度理事会(FRB)は金融引き締め政策、特に政策金利の引き上げを行います。金利上昇は、企業の借入コストが増えることを意味し、投資意欲を減退させる可能性があります。



また、住宅ローン金利の上昇は不動産市場にも悪影響を与え、個人の資産形成に暗雲を投げかけます。
米国金利上昇の波及:世界経済の不安定化と米ドル離れの足音
米国の金利上昇は世界経済にも大きな影響を与えます。米ドル建ての債務を抱える国や企業は返済負担が増加し、経済危機のリスクが高まります。また、新興国からの資金流出を招き、通貨安や経済成長の鈍化を引き起こす可能性も否定できません。



さらに、米国の金利上昇は一見ドル建て資産の魅力を高めるように見えますが、その裏では米ドルへの信頼を揺るがし、米ドル離れを加速させる要因となる可能性があります。
米ドル建て資産の魅力低下:高金利の罠
短期的に見れば米国高金利は米ドル建て資産の利回りを高めますが、それが長期化すれば景気後退のリスクが高まり、かえってドル建て資産の価値を下げる可能性があります。



他国が自国通貨を守るために金利を引き上げれば米ドル建て資産の相対的な魅力は薄れてしまいます。
関税政策による貿易摩擦:米ドルの国際的地位を揺るがす
米国の関税政策は、貿易相手国との摩擦を生み、世界的な貿易秩序を混乱させる可能性があります。報復関税の応酬は、グローバルサプライチェーンの再編を促し、米ドル以外の通貨による貿易決済の動きを加速させることにつながります。



自国中心主義的な政策は米ドルの国際的な信頼を損ない、基軸通貨としての地位を低下させる要因となり得ます。
債務上限問題と財政赤字:米ドルの信認リスクという構造的な爆弾
米国の債務上限問題や巨額の財政赤字は、長年にわたり米ドルの信認リスクを高める構造的な問題です。政府債務の増大は、将来的なインフレ懸念や財政破綻のリスクを高め、投資家が米ドル建て資産を避ける理由となり得ます。繰り返される債務上限を巡る政治的な混乱は、米ドルの安定性に対する疑念を増幅させます。
アレコレややこし過ぎる


新たな潮流:デジタル通貨と分散型金融が描く未来
国際決済銀行(BIS)が示す将来の金融システムでは、中央銀行デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currency)やトークン化された預金といった新たなデジタルマネーが既存の金融システムと共存・連携する未来が描かれています。



これは基軸通貨のあり方に大きな変化をもたらす可能性を秘めた新たな潮流です。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは?



中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは、次の3つを満たすものであると言われています。
(1)デジタル化されていること
(2)円などの法定通貨建てであること
(3)中央銀行の債務として発行されること。
詳しくはこちらのサイトでご確認ください。
日本銀行 リンク:中央銀行デジタル通貨
中央銀行デジタル通貨(CBDC)への期待
国際決済銀行(BIS)が2024年6月に発表した最新の調査によると、調査対象となった中央銀行の94%が中央銀行デジタル通貨(CBDC)について何らかの検討を行っているとされています。また同年の米シンクタンク太平洋評議会の最新レポートによると、世界経済の98%を占める134カ国が導入を検討していると報じられています。



BRICS加盟国を中心としたブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカも、2023年以来米ドルに代わるこの中央銀行デジタル通貨(CBDC)による決済システムを推進しています。



また日本銀行も2021年4月から実証実験を開始しています。
国際的な決済ネットワーク
各国の中央銀行が発行するCBDCは、決済の効率化やコスト削減など、多くのメリットが期待されています。もし主要国が独自のCBDCを導入し、国際的な決済ネットワークが構築されれば、米ドルを介する必要性が低下し、米ドル離れの動きが加速すると想定されます。
ブロックチェーン技術でのトークン化
また、銀行預金をブロックチェーン技術でトークン化する動きも活発です。これは、従来の銀行システムよりも迅速かつ低コストな取引を可能にし、分散型金融(DeFi)との連携も期待されています。



これにより、既存の銀行システムや米ドル建て決済インフラへの依存度が低下する可能性があります。
分散型金融(DeFi:Decentralized Finance)とは?
従来の金融システム(CeFi:Centralized Finance)とは異なり、中央集権的な管理者(銀行や証券会社など)を必要とせず、ブロックチェーン技術を活用して構築された金融システムの総称です。
DeFiはまだ発展途上の分野であり、日々新しい技術やサービスが登場しています。その可能性に注目が集まる一方で、現時点でDeFiには規制やセキュリティリスクが存在するため、利用には注意が必要です。



さらに、異なる通貨間のクロスボーダー決済(国境を越えて行われる国際決済)が効率化されれば、貿易決済や国際送金において米ドル以外の通貨を利用する動きが広がることになります。
米ドル離れの加速と基軸通貨体制の変革:個人投資家が取るべき道
長らく世界の経済を支えてきた基軸通貨の米ドルですが、このように今、その足元が大きく揺らいでいます。もし米ドル離れの動きが加速し、基軸通貨体制が変革期を迎えることになれば、私たちの資産にも大きな影響が及ぶ可能性があります。
円高リスクと外貨建て資産の再評価
米ドル安・円高が進む場合、米ドル建て資産の価値が目減りする可能性があります。現在米国中心に資産を保有している方は、ポートフォリオの見直しを検討する必要があります。
外貨準備の分散:リスク軽減の鍵
日本が保有する巨額の外貨準備の大半は米ドル建てです。米ドル安が進むと、その価値が目減りするリスクがあります。個人投資家の皆様も米ドル以外の通貨や資産への分散を検討し、リスク軽減を図ることが重要です。
まとめ
結論:米国中心からの脱却、多元的なポートフォリオの構築へ
米国の関税政策と金利上昇は米ドルに対する信頼を揺るがし、米ドル離れを加速させる可能性があります。将来の金融システムは単一の基軸通貨に依存するのではなく、より多元的なものへと移行していく可能性が高いと言えるでしょう。
個人投資家の皆様は、この変化を認識して米国中心のポートフォリオから脱却し、様々な資産への分散投資を検討する必要があります。
金(ゴールド)やデジタル通貨など多様な選択肢を視野に入れ、ご自身の資産を守り成長させるための戦略を今こそ見直すべき時です。
基軸通貨の変遷は世界経済のパワーバランスを大きく左右する可能性があります。常に最新の情報を収集し、変化に対応できる柔軟な姿勢を持つことが今後の資産形成において不可欠と考えられます。
ということで、かもナスもアセットバランスとポートフォリオの見直しを始めています。とは言っても正確には「悩んでます!」って感じです。
皆様はどのようにお考えになりますでしょうか?
巷では、米国、中国、日本の比率を下げて、欧州(ドイツ)と新興国(インド)と金(ゴールド)のウエイトを上げた方がイイと言われていますが、具体的にどのファンド(投資信託)をどのくらいの割合で購入すれば良いのか、悩ましいところです。
また後日、かもナスの投資方針に変更があれば、当サイトでお伝えしたいと思います。
本日は、ここまでお読みいただき
誠にありがとうございました。

