記事の要旨:前回投稿した【夫婦2人世帯編】に続いての【単身世帯編】となります。今回の記事では【夫婦2人世帯編】から、お一人様のケースに変わる部分のみ掲載しますので、基本的事項や各設定数値の条件などは、【夫婦2人世帯編】の記事の方でご確認をお願いいたします。それでは、老後生活やFIRA60を達成するために、いくら準備出来れば良いのか、順を追って見て行きましょう。
老後に必要な資金
標準的な単身世帯のシミュレーション

2024年の財政検証では、2024年度時点で65歳の人が受取れる年金の平均月額は、男性14.9万円・女性9.3万円とされています。標準的な生活費が、約16万円(年間192万円)です。
これらの数字から見て取れるのは、単身世帯は、男女差でかなりのバラツキがあり、モデルケースをどのように設定すれば良いか、随分悩みました。悩みに悩んだ結果、
今回は、個人事業主の方を念頭に、年金を基礎年金の満額に近い年間78万円(月額6.5万円)のみに設定してみます。また前回と同様に現在60歳で、標準的な生活費とされる約16万円(年間192万円)の生活レベルを目標とし、リタイア時の資産が1,000万円の方をモデルケースとしてシミュレーションをスタートして行きます。



それでは、どのような資産推移を辿るのか検証してみましょう。
Microsoft Excelを用いて計算シートを作成し、数値を入力します。





まずは、実質インフレ率0%の場合です。





実質インフレ率0%の設定でも基礎年金だけでは、73歳で資金が枯渇してしまいます。



では、このインフレ率0%想定の環境で幾らあれば、100歳あたりまで資金が枯渇しないのか試算してみます。





結果は、約3,800万円必要となります。
この金額ですでにリタイアされている方にとっては、昨今のインフレが、かなり厳しい状況なのではないでしょうか。



このライフプランにおいて実質インフレ率が2%になったと仮定した場合、どのように変化するのかを確認してみた結果がこちらです。





インフレにより、86歳あたりで資金が枯渇してしまうことになり、リタイア当初のプランから、生活レベルを見直し、変更をしなければならない状況となってしまいます。



では、実質インフレ率2%の世界においては、幾ら必要となるのでしょうか。





結果は、約7,400万円必要となりました。
「失われた30年」とも言われる日本の長期のデフレ時代においては、このケースの場合、3,800万円で済んだ老後資金ですが、2%のインフレ時代に対応するためには、およそ2倍近くの7,400万円が必要となります。



では、ここから、年金受給を繰下げで遅らせて、どのように変化するか見て行きます。
まず、70歳受取の場合がこちらです。





結果は、約6,900万円必要となりました。



次に75歳受取を見てみます。





結果は、約6,700万円となりました。



この時の設定状況は、このようになっています。
インフレを加味した生活費





当初78万円であった基礎年金は、繰下げにより84%増額されて、約144万円となっています。
インフレによる年金の増額は、厳し目に試算するために、加味していないので、この金額があれば、実際には、もう少しゆとりのある生活が出来る可能性があります。
黄色網掛け部「リタイア時」が、リタイア開始時の生活費(実質インフレ率を2%想定した5年後の生活費で、現在と同等の生活レベルを維持できる金額)となります。また、画像右下、リタイアしてから30年後の95歳時点では、384万円の生活費が現在の生活レベルと同等という事になります。
FIRA60の検証



それでは、ここからは、FIRA60を検証して行きましょう。
モデル設定したこの方が、今から5年後にリタイアするのではなく、今すぐ60歳でリタイアする場合のシミュレーションとなります。



まずは、60歳から繰上げて年金を受取る場合です。





結果は、約8,600万円必要となりました。



次に、年金を65歳で受給する場合を試算してみます。





結果は、約8,300万円となりました。



次に年金を70歳で受け取る場合です。





結果は、約7,800万円となりました。



最後に75歳受取の場合です。





約7,500万円という結果になりました。
まとめ
結果を表にまとめるとこのようになります。(70歳以上でのリタイアは、数字だけ調べて掲載しています)





今回は、実質インフレ率2%設定、年金の増額は加味しないという設定で、単身世帯のシミュレーションを行いましたが、ある程度の数字が見えて来ましたでしょうか。



インフレへの対策は、現預金だけでは、無防備な状況で全くと言っていいほど太刀打ちできません。



インフレに対応出来る資産は、投資ジャンル(リスク資産)にしか存在しませんので、現預金だけで老後生活を安定させるためには、厳しめに、厳しめに見積もることが、とても重要になって来ます。
次回記事では、前々回に告知させて頂いた、投資した場合の資金についてシミュレーションして行く予定です。が、、、これまでのようなシミュレーションでは「難しくて良く分からない」あるいは「モデルケースが自分の条件とは乖離していてピンと来ない」という方などに向けて、年金を交えず、生活レベルの目標金額も取り除いた、シンプルなシミュレーションを盛り込んだ投稿とさせていただきたと考えています。またぜひ、ご一読いただきたく、宜しくお願い申し上げます。
本日は、ここまでお読みいただき
誠にありがとうございました。

